小郡の犬飼さん 七夕ぼん-おごおり探検隊

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「はいっておやすみなさい。」
と、彦がいった。娘はすなおにはいってきた。彦はおかゆなどを食べさせた。しばらくすると、娘のほおがほんのり赤くなって、元気が出てきたようだ。彦はその顔にみとれた。娘は彦の家に住むことになった。
 彦はアカが外で畑の手入れをしていると、娘は彦の死んだ母親がつかっていた機にすわって、母の残した糸で布を織りだした。トン、カラ、トン、カラ、トントン、カラリと、軽い音がひびいて布ができていく。うまいものだ。織るのが好きだから織女(おりめ)というのだと、娘は自分の名をいった。
 彦の小さい家は織女(おりめ)がきてからみるみるきれいになった。彦と織女はまもなく夫婦になった。男の子と女の子がつづいて生まれた。アカは二人の子どものお守りにむちゅうだ。inu-03.jpg
 男の子五歳、女の子四歳の春。古い物置小屋の奥にもぐりこんだ男の子が、くさった板をはがしていて、その奥から木の箱をさがし出した。箱はくさってこわれていた。男の子は布をひっぱり出した。紫色のきれいな布だ。二人の子どもは布の両はじをもって、ひっぱって遊んでいた。
「まあ、それ!」